ザッポスがたくらむ、ラスベガスダウンタウン再生計画

「顧客にワオ!を届ける」のスローガンのもと、顧客へのいわゆる「神対応」で急成長した靴のオンライン小売、ザッポス。
気鋭の起業家、トニー・シェイ氏が率いるザッポスは、2013年に本社をラスベガスに移転しました。

ラスベガスというとカジノを思い浮かべますが、ザッポスが移転したのは、実は旧ダウンタウン。今はすっかりさびれている地域なのです。なぜこんな場所に?

しかしそこがトニー・シェイ氏のユニークなところ。

彼は、私費も投じて、ダウンタウンの改造計画に乗り出しているのです。

ダウンタウン再生といっても、ハコもの行政的な、「〇〇を誘致」「〇〇スタジアムを建設」の類では全くありません。

シェイ氏とザッポスがもくろんでいるのは、「おもしろい人」「才能あふれる人」「優秀な人」「情熱のある人」「なんだかわからないけれど、面白いことが好きな人」などが磁力に引かれて集まってきて、出会い頭に「何かおもしろいことやろうよ!」と盛り上がり、そしてそれを成し遂げてしまうようなコミュニティを作り上げることなのです。それをシェイ氏は、Serenpidity(偶然の発見、偶然の出会い)と呼んでいます。

 

しかしもちろん、値千金の「偶然の発見」などが、そこらじゅうに転がっているわけではありません。そのコミュニティに属している人たちがみんなおもしろいからこそ、誰とであっても偶然の面白さがある、ということなのです。シェイ氏はこのプロジェクトにお金もたくさん出していますが、彼自身がものすごい磁力を持っているらしく、彼に出会ったことによってラスベガスにやってきてしまった、という人も大勢いるそうです。投資の対象は、「建物」ではなく、「人」。だから、新しいビルは建てません。全部居抜きです。タランティーノの映画に出てきそうな、70年代風のちょっとうらさびれたビルを、上手にリノベートして使います。

ザッポスの本社は、見学ツアーによって一般にも広く公開されていますが、ダウンタウン再生プロジェクトも(DTP)、ツアーに申し込むことができます。集合場所はこんなカフェ。といっても、コーヒーを出すのが目的の場所ではありません。ここに住む人たちが寄り集まって、仕事をしたり、ミーティングをしたり、ディスカッションをしたり、何かイベントをやったりすることのできる場所。こういった場所を、DTPはダウンタウンにたくさんつくりだしています。

 

ここは、Learning Villageと呼ばれる一角。かわいらしいモジュール型の教室のようなものがたくさん並んでいます。ここは、誰でもが気軽にワークショップ、イベント、講演、上映会、勉強会などを開催できるレンタルスペースのような場所だといいます。

そして、ダウンタウンの名所ともなっている、コンテイナー・パーク。その名の通り、貨物コンテナ1つを1店舗としたスタートアップのお店が軒を連ねる、ちょっとしたショッピング&軽食&遊び場スペースです。正面に置かれているカマキリが目印。このカマキリ、シェイ氏がポケットマネーで買ったものだとか。理由は「おもしろいから」だそうです。

 

この場所は、あくまでも第一のステップ。ここで成功してコンテイナー・パークを卒業し、もっと大きなお店を出すことが求められています。したがって、チェーン店などの類は一切入っていません。

ベネフィット・コーポレーションというビジネスのあり方

現在アメリカの7つの州で法的に認定されている、「ベネフィット・コーポーレーション」という新しい法人形態があります。この法人形態では、企業が社会貢献や環境貢献をすることが「企業のミッション」として認められます。ベネフィット・コーポレーション、という選択をすることにより、企業は経済的な利益追求だけでなく、社会・環境への貢献という利益を追求してもよい、というお墨付きを与えられることになります。現実には、企業が必ずしも金銭的な利益にならない取り組みを社会貢献、環境貢献のために行おうとする場合、「株主の利益を損ねた」として株主から訴えられる、というリスクから企業を保護してくれる制度といえるでしょう。

<a href=”http://benefitcorp.net/”>http://benefitcorp.net/</a>

現在ベネフィット・コーポレーション承認のための法制度が整っている7州は、カリフォルニア、ニューヨーク、ハワイ、バージニア、メリーランド、バーモント、ニュージャージーであり、法案が検討されている州はノース・カロライナ、ペンシルベニア、ワシントンDCの3州です。法制度化の動きは、地道ながらも着実に広がっているようです。

カリフォルニア州では2012年の1月にベネフィット・コーポレーションが正式な法人形態として認められ、発効第1日目に、北米における環境貢献企業の代名詞ともいえるアウトドアアパレルメーカーのパタゴニア(本社:カリフォルニア州ベンチュラ市)が申請に訪れ、承認されました。環境貢献や持続可能性を追求する営利企業の代表として、すでに北米では重鎮的存在とも言えるパタゴニアの創設者、イヴォン・シュイナード氏は、承認に際して声明を発表しました。「パタゴニアは100年続く企業を目指しており、ベネフィット・コーポレーションという制度は、パタゴニアのような企業が、半永久的に使命に忠実であることを可能にしてくれるものです。」

<a href=”http://www.treehugger.com/corporate-responsibility/patagonia-becomes-california-benefit-corporation.html”>http://www.treehugger.com/corporate-responsibility/patagonia-becomes-california-benefit-corporation.html</a>

B-Corpには他にも、アイスクリームのベン・アンド・ジェリーズ、洗剤のメソッドなど、個性派企業が顔をそろえています。

<a href=”http://www.benjerry.com/”>http://www.benjerry.com/
http://www.method.com</a>

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バングラデシュでまた工場火災

今やアパレルの一大勢力である「ファストファッション」を下支えしている、バングラデシュの縫製産業。劣悪な労働条件と低賃金が、惨事が起こる度に問題になります。そんな中、バングラデシュ史上最悪といわれる悲惨な火災がRana Plazaと呼ばれる工場で発生し、現時点で275人もの従業員が犠牲になり、多くが現場に取り残されて救出を待つ状態です。

この工場はきちんとした認可を受けずに操業されていたが、オーナーは地元の有力者であり、政府との癒着が指摘されていた、などの問題も多々指摘されており、バングラデシュ国内における縫製産業のありかたも批判の対象になっていますが、翻って、バングラデシュの縫製工場を使っている先進国のアパレルメーカーの対応も問われています。

アメリカ国内では、この惨事に対して、まず最初にメディアが向かったのはウォルマートのようです。というのも、火災を起こしたビルには少なくとも4つの縫製会社が入っており、そのうちの一つのウェブサイトに、ウォルマートで扱われている製品を生産している旨が記載されていたからです。しかし現在のところ、ウォルマートはそれを否定しています。他社も同じように、なるべく「無関係」をアピールする姿勢です。ただ1社、イギリスのPrimark(プリマーク)だけが、Rana Plazaを使っていた、と公表。

去年の11月に同じような火災事故が起こった後、労働組合が中心となって、工場の安全を高めるための様々な国内基準の提案がなされてきたが、アパレルメーカー、小売業界はそれをことごとく否定し、自主的な監査や検査などを改善する、というパッチワーク的な対処に終始してきた。
<p class=”ap-story-p”>「グローバルなアパレル企業は、いろいろな対処をしていると主張している。それぞれ行動規範も定めているし、立派なポリシーもあるし、監査や検査のシステムもしっかりしている、と。それなのに、こうした惨事は後を絶たない。改善は現場では起こっていないのだ」と、バングラデシュのNational Garment Workers Federationの会長は言う。</p>
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<span class=”ap-story-p”>労働組合は、必要な措置はすでに彼らが国際的な労働団体と共同で立案した提案書に書いてある、と言う。この提案書は、現在癒着とワイロによって成り立っている行政による安全監査のシステムを変え、監査の結果によっては、安全基準を満たさない工場を閉鎖することができる、というものである。監査は各企業が拠出するお金によってまかなわれる。</span>
<p class=”ap-story-p”>首都ダッカで行われた提案書のプレゼンには、ウォルマート、ギャップ、H&amp;Mなど、グローバルアパレルメーカー・小売が顔をそろえたが、企業側は、提案は法的な拘束力を支持していることと、コストが高すぎることを理由に、それを却下した。その時点で、ウォルマートは「提案はコスト的に折り合わない」としていたとされる。去年11月の火災以降、労働組合側は、自主的な検査の見直しを要求していたが、大企業でそれを受け入れたところはなかったという。</p>
<p class=”ap-story-p”>今回の事故を受け、ウォルマートは「引き続き、安全対策と労働環境の改善に努めていく」としているものの、APがメールで送った具体的な安全対策についての質問への返答はしていない。H&amp;Mは、回答とともに、H&amp;MのCSRのウェブサイトへのリンクを寄せている。</p>
<p class=”ap-story-p”>一方、ギャップは、去年の12月に、提案を受け入れなかった理由を、訴訟における立場を悪くする可能性があることと、工場の安全基準を高めるために資金をこれ以上出す考えがない、ということを上げている。</p>
<p class=”ap-story-p”>H&amp;Mも提案書にサインはしなかったが、それは、工場と地方自治体が最終的な責任を取るべき、と言う考え方によるという。H&amp;Mはほとんどの製品をバングラデシュで生産しており、20社ほどのメーカー・小売が縫製業界に対しての安全トレーニングのビデオを製作したときの1社でもある。</p>
ウォルマートは昨年より、定期的な工場の監査と避難訓練、火災訓練をあらゆる工場での義務にした。1月には、それに従わない工場との契約を直ちに打ち切る姿勢も明らかにしている。
<p class=”ap-story-p”>ギャップは、専属の火災捜査員をバングラデシュに配置した。</p>
<p class=”ap-story-p”>しかしそういった措置は、3百万の雇用を抱える一大産業を改善するのに十分ではない、と多くの人が考えている。 「自主的な監査は結果も非公開なので、ある企業が安全基準を満たしていない工場を切ったとしても、その情報が公にならない限り、今度は他のメーカーがその工場を使う可能性は高い。」</p>
<p class=”ap-story-p”>去年11月に火災を起こした工場は検査をパスしていたし、今回の火災があったビルに入っていた工場のうち、ヨーロッパの工場監査グループの安全基準を満たしていた企業も2社あった。</p>
<p class=”ap-story-p”>The Tazreen factory that burned last year had passed inspections, and two of the factories in the Rana Plaza building had passed the standards of a major European group that does factory inspections in developing countries. The Business Social Compliance Initiative, which represents hundreds of companies, said the factories of Phantom Apparels and New Wave Style had been audited against its code of conduct which it said focuses on labor issues, not building standards.</p>
<p class=”ap-story-p”>”The audits and inspections are too much focused on checklists,” said Saif Khan, who worked for Phillips Van Heusen, the owner of brands Tommy Hilfiger and Calvin Klein, in Bangladesh until 2011 as a factory compliance supervisor.</p>
<p class=”ap-story-p”>”They touch on broader areas but do not consider the realities on the ground,” he said.</p>

<div style=”overflow: hidden; color: #000000; background-color: #ffffff; text-align: left; text-decoration: none;”>Read more: <a style=”color: #003399;” href=”http://world.time.com/2013/04/26/dying-for-some-new-clothes-the-tragedy-of-rana-plaza/#ixzz2RaNwiQ5R”>http://world.time.com/2013/04/26/dying-for-some-new-clothes-the-tragedy-of-rana-plaza/#ixzz2RaNwiQ5R</a></div>
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ザッポスの野望:ラスベガスダウンタウン再生計画

11月13日14日と、北米でも有数のサステイナブル系のメディア、Greenbiz主催のカンファレンス「VERGE」がサンフランシスコで開催され、一部が無料でストリーミングされました。今回のテーマは「都市、町、コミュニティ」。多くの人が住むアーバンエリアがサステイナブルに発展しなければ、真のサステイナビリティは達成できない、ということからのテーマとなったようです。

<a href=”https://www.interactiongreen.com/wp-content/uploads/2012/11/400px-tony_hsieh.jpg”><img class=”alignleft size-medium wp-image-470″ title=”400px-Tony_hsieh” alt=”” src=”https://www.interactiongreen.com/wp-content/uploads/2012/11/400px-tony_hsieh.jpg?w=200″ width=”200″ height=”300″ /></a>

<a href=”http://www.greenbiz.com/news/2012/11/14/verge-day-2-city-as-startup-platform-organism?page=0%2C0″>14日のトップバッターとして、急成長を遂げたオンライン靴小売のZappos(ザッポス)のトニー・シェイCEOが登壇</a>。

Tony Hsieh(トニー・シェイ)氏は成功した若い起業家で、1999年に創設されたZapposの前身に2000年ごろから資本を入れ始め、売り上げを飛躍的に伸ばしてきました。オンラインショップでありながら、顧客サービスに力を入れ、ファンとリピーターを増やし、最小限の広告費、最大限の口コミ効果を後ろ盾に順調に成長。アマゾンに買収されるまでになっています。(<a href=”http://p.booklog.jp/book/35928″>そのユニークな経営哲学や、普通では考えられないような顧客サービスの理念と内容も、ぜひご参考ください</a>)

シェイ氏は、2013年に予定されているZappos本社のラスベガス移転にともなうラスベガスダウンタウンの再生プロジェクトについてプレゼンしました。普通「開発、再開発」というと商業施設やスポーツ施設の誘致などを思い浮かべますが、Zapposがラスベガスで達成しようとしているのは、ビルや施設などのハードウェアではなく、Zapposの企業理念でもある Collision, Community, Co-learningを達成する場所としての「街」。Collideとは「接触」という意味ですから、ポテンシャルを持った様々な人たちがぶつかりあい、集い、学びあう機会を高めてくれる場所としての「街」をつくりだすことを標榜しているのです。
<a href=”http://downtownproject.com/”>http://downtownproject.com/</a>

シェイ氏は、ROI(Return on investment)ならぬROC(Return of community)を追求し、ポテンシャルを持った人たちの有機的な集合体である「街」に投資すれば、企業にもコミュニティにもベネフィットが生まれるはずであるといいます。もちろんZapposの投資先も、Collision, Community, Co-learningを達成してくれるようなプロジェクトやお店。「接触」するためには、オフィス、街中、人が集まる場所、などあらゆるところで、間仕切りを取り払い、ある程度の人口密度を確保することが必要になってきます。ともに学んでいきたいと思えるような人々がラスベガスに集まるようにしむけ、接触がたくさんおこるような密度で接触の場所を提供してくれる、そういうプロジェクトにZapposは投資しようとしているということです。それによって、Serendipityが生まれるのだ、とトニー氏は繰り返していました。Serendipityとは、「思いがけない発見」といった意味ですので、ポテンシャルを持った人と人が接触することで、1+1が3にも4にもなるような新しいアイディアがどんどん生まれてくる状態を想定しているのでしょう。

また、このプロジェクトは、あえてSNSやネットメディアに頼りすぎず、むしろ意図的にアナログな人と人の「接触」に重きを置いているとのこと。

Zapposの成長のようなダイナミズムでラスベガスの街が変わっていくとしたら、今後ここからいろいろなおもしろいことが生まれてくることでしょう。

<span style=”color: #999999;”>写真:台湾系アメリカ人のトニー・シェイ氏は、新しい世代の起業家として、時代の顔とも言える活躍で注目を集めています。</span>

新しい消費のカタチ:シェアリング経済

フェイスブックをはじめとするソーシャルメディアは、消費のあり方を変えるかもしれません。
インターネットがオンラインによるモノの取り引きのあり方を完全に変えてしまったように、ネット技術を応用した次世代のビジネスモデルが次々と立ち上がっています。

オンラインショッピングが販売者と消費者を直接につないだように、<a href=”http://www.collaborativeconsumption.com/”>Collaborative consumption</a>(共同消費)やSharing economy(共有経済)と呼ばれるビジネスモデルは、消費者と消費者を直接つなぎ、彼らがすでに所有しているアセット(部屋、クルマ、モノ)などを貸し借りしようというものです。

どんな世帯においても、多くの所有物が「たまにしか使われない」以上、共同消費へのポテンシャルは非常に高いと考えられますが、消費者と消費者直のモノのやりとりについては、信用という問題が大きく立ちはだかります。そのため、フェイスブックのように、すでに信頼関係ができあがっている人と人とのネットワークやコミュニティを使うなどの方法で信用問題を解決しようとするのが、共同消費の特徴です。

共同消費のスタートアップの一つであるYerdleによれば、「共同消費」に最初に飛びついたのは、1)活動的なママたち、2)新しもの好きな都市型の若者、だそうです。昔の「井戸端会議」的なコミュニティが、ネットに移行している様子が目に浮かびます。また、共同消費のスタートアップがサンフランシスコのような都市部に集中していることは、効率的な共同消費にはやはりある程度の密度(人、モノ、サービス)が必要であることを物語っています。(日本は共同消費に向いていそうです)

現在、モノというのは初期投資を安く、そのかわり減価償却は早い、という形でつくられているものが多いですが、「貸し借り」という形で、モノがその価値を継続的に持ち続けられるようになれば、昔のように「長く使えるものをつくる」という風潮が戻ってくるかもしれません。

<strong><span style=”text-decoration: underline;”><span style=”color: #0000ff; text-decoration: underline;”>Collaborative Consumptionに挑んでいる企業たち</span></span></strong>

部屋の貸し借り: <a href=”https://www.airbnb.com/”>Airbnb</a>
クルマによる送迎: <a href=”http://www.lyft.me/”>Lyft</a>
クルマ: <a href=”http://www.getaround.com/”>Getaround</a>
モノ: <a href=”http://www.yerdle.com/”>Yerdle</a>

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なぜほとんどの新製品が失敗に終わるのか

原典はこちらから:<a href=”http://www.sustainablebrands.com/”>Sustainable Brands</a>2/8付け記事 <a href=”http://www.sustainablebrands.com/news_and_views/articles/why-most-innovation-turns-out-be-rubbish”>”Why most innovation turns out to be rubbish”</a>

AcuPOLL North America社が2006年にホワイトペーパーを出した際、 Mark Sneiderは実に2万点もの新製品を調査し、成功したといえる製品は、なんと10%にも満たなかった、と結論付けるに至った。事実、共通の想像力をか きたてることができずに失敗した製品を思い出すのはそんなに難しいことではない。ギネス・レッド、ハインツ(トマトケチャップ)のパープルとグリーン、ペ プシ・ブルー、マクドナルドのスーパーサイズ・・・・・・。もちろんイノベーションの歴史はまた失敗の歴史でもあるわけで、これらの数字は驚くにはあたら ないかもしれない。

しかし、さらによくよく考えてみると、これはやはりショッキングな事実である。なぜなら、こういった調査結果が多少なり と本当であるなら、世界中のリソースと時間の90%が無駄になってしまっているということなってしまうのだから。他の分野で、90%もの失敗率が許される 仕事というのはほとんどないはずなのに、である。

私が一番最初にやった仕事の一つが芝刈りであるが、最初私はどうやってもまっすぐ芝を刈る ことができなかった。ところが、「遠くのポイントを定めて、そこに向かって芝刈り機を動かせばいい」というアドバイスをもらってから、私の技術は劇的に向 上したのである。それ以来、私の刈る芝生はまっすくで均一になった。

さて、芝刈りとイノベーションに何のかかわりがあるのかというと、すべ てである。イノベーションというのは、ある目的を達成するために行われるはずである。この目的は、今日は「オーガニック」、明日は「脂肪ゼロ」や「カロ リーゼロ」、はたまた「高濃度オメガ3」、「低GI」、といったような流行を追いかけたり、浮気心を出したりすることよりもずっと大事である。

イ ノベーションとは、そのブランドが、「10年、20年後の将来の人々の暮らしの中で、こういうふうに役に立っていたい」という未来図としてあるべきもので あって、決して明日あさってのマーケットに間に合わせるためだけのものではない。すべての新製品は、未来に向かっての重要な一歩としての役割を担っている べきなのである。スーパーサイズのハンバーガーが、マクドナルドの未来を語っているだろうか?紫やグリーンのケチャップが、ハインツの食の未来への野望を ものがたっているだろうか?

例えマイナーチェンジであっても、はっきりした方向性があるということは大きな助けになる。ブランドがどこに向 かっているのかという方向性が定まっていなければ、新製品も新サービスもぶれてしまい、混乱を招いて成功よりも停滞をもたらしてしまうことになる。長期的 なビジョンに基づいて新製品を開発して行くという形であってこそ、次に続くイノベーションが前のイノベーションの礎の上に成り立つことを可能にし、新製品 がより低コストで、ターゲットとなるオーディエンスにわかりやすい形で提供できるのである。

「遠くのポイントを定めて、それに向かって走れ。」