Storydoing

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ここ数年、マーケティング業界の一大トレンドであったストーリーテリングの進化形は、「ストーリードゥーイング」?

「スーパーストーリーが人を動かす 共感を呼ぶビジョン&アクション」の著者であるタイ・モンタギュー氏は、2014年6月のサステイナブル・ブランズ会議で、「これからのマーケット・リーダーは、ストーリーテラーではなく、ストーリードゥーワーでなければならない」、と講演しました。ストーリーテリングに長けたマーケットの勝者たちの上を行く真のリーダー、ストーリードゥワーとは。

語るべきストーリーを持つブランドが消費者を引き付けるのはもちろんですが、その中からさらに、ストリーを「語る」のみならず、ストーリーを「生きる」ストーリードゥーワーが頭角を現してきた、とモンタギュー氏は言います。そして、ストーリードゥワーにとって、ストーリーは、マーケティング部によってつくられるものではなく、企業を引っ張るトップマネジメントによって生きられているものであり、企業の核をなすものなのである、と。

ベンツがストーリーテラーなら、テスラはストーリードゥーワー。洗剤業界でいえば、クロロックスがストーリーテラーなら、メソッドはストーリードゥーワー。

  • ストーリーテラー
  • メルセデス・ベンツ
  • ユナイテッド航空
  • マウンテン・デュー
  • クロロックス
  • リーボック
  • レノボ
  • ストーリードゥーワー
  • テスラ
  • ジェットブルー
  • レッド・ブル
  • メソッド
  • トムズ・シューズ
  • アップル

モンタギュー氏の会社は独自のアルゴリズムを使い、既存のストーリーテラーとストーリードゥーワーを分析しました。そして、次のような結果を得たといいます。

事実1) ストーリードゥーワーはストーリーテラーの1/3しか広告費を必要としない
事実2) そのかわり、ソーシャルメディアで話題になる回数が圧倒的に多い
事実3) ストーリードゥーワーの利益の伸び率は、ストーリーテラーをはるかに上回る
事実4) ストーリードゥーワーへの、社員や顧客からのロイヤルティは非常に高い

語れるストーリーを持つ企業として、いわゆる「勝ち組」とされているストーリーテラー企業の、さらに上を行く、一握りのストーリードゥーワー。彼らは勝ち組であるだけでなく、真のマーケットの牽引者です。それでは、ストーリードゥーワーの特徴とはどんなものなのでしょうか。

1) ストーリードゥーワーは、ストーリーを企業の真ん中に置く

ストーリーはマーケティング部がつくるものではない。ストーリーは企業のマネジメントの中に生きている。

一番身近な例は、スティーブ・ジョブズでしょう。彼は、「誰もどうやって使うかわからない、複雑で味もそっけもないコンピューターという製品を、変革する」というストーリーを、自ら生きた。

ジョブズは、毎週マーケティングチームと会議室にこもってミーティングをやったそうです。それは、彼がマーケティングを好きだったからではなく、自らが「チーフ・ストーリー・オフィサー」であるべきだという役割を理解しており、アップルが発表するものは、それが製品であれ広告であれ、一貫したストーリーを発信していなければならない、と確信していたからなのです。

2) ストーリードゥーワーは、大きな解決を実現するための道のりを歩んでいる (Be on a quest)

Quest(クエスト)とは、世界に大きな、プラスの変化をもたらし、何かを還元することだと、モンタギュー氏は言います。

なぜQuestが大切なのか。それは、Questがストーリーの源、エンジンだからです。

カーペットのインターフェイスは、レイ・アンダーソンという中興の祖のもと、「利益を追求する企業」から、「環境負荷を積極的に減らす、サステイナビリティを追求する企業」として生まれ変わります。

この事実は、インターフェイスという企業の「ストーリー」を一気に変えました。営業が外で自分のブランドのことを語るとき、また、社員が自分の会社のことを語るとき、その中心にあるものは、インターフェイスの「環境・サステイナビリティの追及」というQuestであるようになったのです。ちなみに、企業の取り組みとしての環境への貢献というストーリーを語る、という限定的な意味ではもちろんありません。1) に戻ると、そのストーリーは企業の真ん中に置かれていなければならない。インターフェイスは、サステイナビリティへの信念にもとづいてモノづくりを根本的に変えました。例えば今ではポピュラーになった、モジュール式のカーペット。一部が破損したり汚れたりした場合、パズルのピースのようにその部分だけを取り換えればよく、ムダが少ないのですが、それを最初に開発したのがインターフェイスです。インターフェイスにとって、サステイナビリティを語ることと、ブランドや製品を語ることはイコールになり、その信念が経営陣と社員の間であまねく共有されることになった。

自分たちが企業人として仕事を遂行する糧となっているストーリーを社内で、そして社外で一貫して語れることは、社員のやりがいにもつながる。インターフェイスは、「働きたい会社」ランキングでも常に上位に位置しています。

3) 戦うべき敵を持つ

敵と言っても、競合他社のことでは全くありません。世界にプラスの影響を与えるためのQuestに出るとき、取り去ってしまいたい障害、問題はなになのか。何を解決しようとしているのか。解決しようとしているものを、明確に敵と見なせているかどうか。ストーリードゥーワーは、そこがはっきりしているのだ、とモンタギュー氏は言います。競合他社よりもはるかに大きな敵を、ストーリードゥーワーたちは見据えている。Questを「冒険」と訳するなら、ストーリードゥーワーたちは、社員や顧客、ファンを連れて、大きな問題を解決するための冒険へと出発するのです。

テスラをつくったイーロン・ムスク氏は、一番最初に、「テスラの敵は、化石燃料とカーボンに依存した経済の仕組みである」と宣言しました。テスラの目標は、化石を使わなくても目的を達成できる経済をつくりあげることである、と。

そしてムスク氏は、それをストーリーとして紡げるような象徴的なアクションをいくつか取っています。例えば、充電ステーションを西海岸と東海岸から作り始め、あたかも1800年代に鉄道が東から西まで全米をつないだように、象徴的なかたちでつないだ。充電ステーションは、まず大胆な構想をぶち上げて、それを物理的に達成していくやり方で、構想の時点でまずメディアなどの注目を浴び、達成のマイルストーンごとに、さらに積極的に取り上げられました。(下の地図を参照)ステーションは今も拡大を続けています。

また、自動車販売の常識を覆し、メーカー直売、というモデルを始めた。これは州によっては販売店側から裁判を起こされたりして、メディアの大きな注目を集めました。そして、テスラのオーナーにとって、「なぜ私はテスラを買ったのか」という、語るべき「ストーリー」となった。

筆者注: ストーリードゥーワーとしてのイーロン・ムスクの本領が発揮されたのが、パワーウォールの製品発表です。こちらも合わせてお読みください。

Suparcharging stations

それでは、市場のリーダーたるストーリードゥーワーになるためには、何をなすべきか?モンタギュー氏は、6つの項目を上げました。

ストーリードゥーワーになるための6つの質問

1) 語るべきストーリーがあるか?
社内を見回したら、ストーリーは500でも600でも出てくるはずである。しかし、全てを内包する1つのストーリーにフォーカスせよ。

2) そのストーリーは、商業的なインスピレーションだけはなく、もっと壮大な、企業の大志を伝えてくれるものか?

3) そのストーリーは、「敵」を明確に定義しているか?

4) そのストーリーは、会社がする全てのアクションや決定のバックボーンになっているか?

5) ストーリーを明確にするような、象徴的なアクション、出来事、宣言、対外的なマイルストーンなどがあるか?

6) 企業の外の人たちも、そのストーリーに関わったり、参加したりしているか?